テント泊で歩く晩秋の弥山

テント泊で歩く晩秋の弥山

Introduction

近畿圏最高峰に登る!と意気込んで計画した今回の山行は初めてのテント泊。目指すは川合登山口をスタートとし、弥山を経由して八経ヶ岳の登頂。当初は弥山小屋付近を野営地とし、2日目に八経ヶ岳を登頂して再び川合登山口へ下山という予定だったが、初めて背負うテント泊装備の重量による想定外のペースダウンで、変更に変更を重ねる結果となり反省の多い山行となった。

概要

1日目は川合登山口をスタートとし弥山小屋付近でテント泊を予定して登山開始。弥山を目指す登山口として最もメジャーなのは行者環トンネル西口だろう。こちらをスタートとすると弥山山頂までは約3時間。一方、川合をスタートとすると弥山までは約6時間となり、登りの道のりは随分と長くなるが今回はテント泊の計画ということもあり、体力の消耗が予想される2日目のコースを短くしたいと考えこのルートを選択した。キャンプ地は弥山小屋横の国見八方覗にする予定だったが、初めて背負う20kgを超える装備で思うように足が進まず、栃尾辻を過ぎたあたりで時刻は15:00。日暮れまでに弥山には届かないと判断し、予定を変更して天女の舞付近でテントを設営。

2日目弥山経由で八経ヶ岳を目指す予定だったが、この日も登山道の凍結などで計画通りのペースでは進むことができず、弥山山頂に到着した14:00の時点で八経ヶ岳を目指すのを断念。そのまま行者環トンネル西口へ向かって下山することにした。行者環トンネル西口からは弁天ノ森手前で手配したタクシーで約5,000円をかけて天川村役場まで戻るという結果になったが、下山時の疲労は激しく、待ち合わせの時間を30分遅れていたにも関わらず待ってくれていたことが有り難かった。

コースタイム

1日目:2018.11.23
山行
休憩 合計
8時間43分 4分 8時間47分
2日目:2018.11.24
山行
休憩 合計
5時間27分 2時間23分 7時間50分

1st Day

登山開始-川合

川合登山口登る場合、一般車向けに無料で解放してくれている役場の駐車場を利用させてもらうのが便利だ。川合登山口のある天川村までは自宅から車で約3時間。役場から登山口までは役場前の橋を戻り、再び吊り橋で弥山川を渡って数分でアクセスできる。無料で解放してくれている天川村役場の駐車場が実にありがたいと感じながら橋を渡り登山を開始。

登山口からはいきなり急勾配な登りが始まり、薄暗い林道を進み続ける。20分ほど登り続けると少しだけ景色が開けるのは最初の鉄塔のあたり。眼下には弥山川が見え、斜面には紅葉の名残。黄金色に色付いたすすきが印象的だ。

登山口からはいきなり急勾配な登りが始まり、薄暗い林道を進み続ける。20分ほど登り続けると少しだけ景色が開けるのは最初の鉄塔のあたり。眼下には弥山川が見え、斜面には紅葉の名残。黄金色に色付いたすすきが印象的だ。高い頭を突き出してこちらを見下ろしているのはバリゴヤノ頭だろうか。尾根に到達するあたりでは、すでに葉を落としてしまった木々の枝が薄っすらと霧氷を纏っている。気温も徐々に下がり、立ち止まるとフリースだけでは肌寒い。林道出合を過ぎたあたりで、遅めの昼食を取るためにリュックを下ろした。

ランチ

ランチに持ってきたのはサタケのマジックパスタのカルボナーラと同じくサタケのマジックライスのえびピラフ。このシリーズはパッケージにお湯を注ぐだけでパスタやピラフなどが簡単に作れ、スプーンも同封されていて親切。どちらの味も少しあっさりとした印象で山で食べるには少々物足りない。この日の寒さの中で薄いパッケージでは出来上がりの3分後には随分と温度が下がってしまい体を温めるにも心許ない。個人的には塩分と水分をたっぷりと補給できるカップヌードルの方が好みだ。食後には紅茶をいただいて体を温め、約1時間の休憩を済ます。昼食を済ませ先へ進むと1時間ほどで栃尾辻の避難小屋に到着。時刻は16:00を迎えようとしている。当初予定していた弥山小屋までは到底届かず、狼平へも日没までには間に合いそうにない。テントを設営できそうな場所を探しながら20分ほど進み、天女の舞付近を今日の野営地に選んだ。

キャンプ

テントの設営には予想以上に時間がかかった。寒さのため手が悴んで思うように動かない。地面が柔らかくペグが効きそうにない為、大きな石を集め、張り綱を括り付けてテントを固定。なんとかテントの設営を終え、寝袋を広げ終えた頃にはすっかり日は落ち辺りは真っ暗になっていた。夕食の支度を始めた頃、気温は0℃を下回りガスカートリッジの表面は凍っている。

ディナー

夕食は宮崎牛のしゃぶしゃぶ。凍えるような寒さの中聞こえるのはガスが燃える音と遠くで泣く鹿の鳴き声のみ。しゃぶしゃぶはいつ食べても美味しいがこの環境下で食べる宮崎牛のしゃぶしゃぶは格別。〆にご飯と卵を入れて雑炊を作り、満腹感で緊張を和らげる。それでも寒さは紛れず、食べ終わるとテントの中に飛び込んで寝袋に包まり酒を煽った。空は相変わらず雲で覆われて星は見えない。今夜はせっかく担いで来た三脚も出番もなさそうだ。山の星空を諦め、21:00にはランタンの灯りを消したが、足先が冷えてなかなか寝付くことができない。次回の対策を考えながら足先にダウンベストとシェルを巻きつけてなんとか眠りについた。

Item Information
モンベルダウンハガー800#3

スタッフバッグ込みで600gと軽量でオールラウンドに活躍する3シーズンシェラフの定番中の定番。最低使用温度は-2℃。この日の気温がちょうど-2℃前後で十分に寒さを凌ぐ事はできたが、テントの壁際に近い足先の冷えが気になった。氷点下を下回る環境で使用する場合はテントシューズなどの対策を検討したい。

THERMARESTクローズドセルマットレスZライトソル

アコーディオン式に折りたたむ事ができる3シーズンシェラフマット。クッション性が高く、テント泊には必須のアイテム。アルミ蒸着を施す事により高い断熱性を実現しており、この日の気温でも地面からの冷気を感じることはなかった。折りたたみ式ため、シェラフマットとしての用途のほか、休憩時にも素早く広げる事ができ重宝する。

2nd Day

登山開始

朝になりテントから出ると、空は真っ青で雲ひとつ見当たらない。この様子なら明け方には星が見えていたかもしれない。昨日は縁のなかった太陽の光を暫く浴びて出発の準備に取り掛かかる。テントを撤収し、荷物をリュックに入れ終えてまずは狼平に向かう。昨日よりも成長して分厚くなった霧氷が、太陽に照らされて輝きながら舞い落ちる様子が美しい。

幻想的な景色を楽しみながら緩やかな登りを1時間ほど進んで行くと高崎横手からは下りになる。15分ほど下ると狼平の吊り橋に出る。吊り橋を渡った先にあるログハウスが狼平避難小屋だ。

狼平

狼平に着いたのは11時前。昨日出発した川合登山口からほとんど人に会っておらず、ここでも人の気配はない。せっかく天気に恵まれたので沢に降りて昼食を兼ねた遅めの朝食を摂る事にした。

ブランチ

メニューは玄米パンにベーコンエッグとウィンナー。普段から朝食にはパンを好む私としては、山でもパンを焼きたかった。パンを焼くために持参した道具はユニフレームfanマルチロースター。常備しているシングルストーブSOTOウィンドマスター(SOD-310)でも遠赤外線で美味しくパンを焼くことができる。
しかしこのマルチロースター、重量は290gで決して軽量とは言えない。パンを焼くためだけにこの重量をテント泊のリュックに詰め込むのは実に合理性に欠けると我ながら首を傾げはしたものの、これも山の楽しみ方だと自分に言い聞かせている。

ベーコンエッグを実現させるにはフライパンも必要になる。昨夜のしゃぶしゃぶには鍋が必要だったこともあり、コッヘルはフライパンと鍋がセットになったスノーピークヤエンクッカー1000(SCS200)を選択。フライパンの取手は着脱式で鍋とフライパンをコンパクトにスタッキングできる。2名程度のテント泊にはとても使い勝手が良い

Item Information
ユニフレームFanマルチロースター

特殊耐熱鋼メッシュでストーブの熱を赤外線の熱に変換する音によりパンや餅などの食材を焼くことができる。290gと少々重量はあるがコンパクトに折りたたむ事ができるためスペースは取らない。パン好きの人には是非お薦めしたい。

スノーピークヤエンクッカー1000

φ168mmの鍋とフライパンのセット。フライパンの取手は脱着式となっており収納時は鍋の中に入れてコンパクトにスタッキングできる。特にφ168mmのフライパンは卵やウィンナーを焼くのに非常に重宝する。ソロでは少々嵩張るが2名程度の山行ではむしろ荷物の軽装化に貢献する。

青空の下で料理をするのは実に気分が良い。ベーコンエッグもウィンナーもシンプルで簡単に作れるものだがそれがとても贅沢に感じられるのは山ならではだろう。お湯を注ぐだけで出来上がるドラーフードの食事とはまた一味違った喜びを感じることができる。
2時間近くのゆったりとした休憩を終えて狼平を後にした。

弥山

狼平から弥山山頂への登りは長い階段から始まる。階段の踏面には薄っすらと雪が残っており気を抜けば足を滑らせそうだ。足元の不安による緊張のせいもあって体力の消耗が激しい。狼平を後にして登り続ける事約30分、視界が開けてくるとすぐ右手から近畿圏最高峰の八経ヶ岳が出迎えてくれる。八経ヶ岳の背後にはどこまでも続く大峰山系の山々。正面には弥山の山頂が顔を見せ始める。

この高さまで来ると大峰山系の特徴とも言える立ち枯れの木がよく目につく。更に登り続け、狼平を出発して約1時間で弥山小屋に到着した。

弥山小屋

弥山小屋はこの時期運営おらず中に入ることはできない。庭のベンチではおそらく行者還方面から登ってきたのであろう親子の登山客が登りの疲れを癒している。その風景はとても長閑で、私もようやく重いリュックを肩から下ろした。

ちょうどその頃、1組の登山隊が弥山山頂に向かって出発した。一際大きなリュックを担ぎ、1列に並んで弥山小屋前の鳥居を潜って行く後ろ姿がとても印象的で、私も列に続いて弥山山頂へ向かう事にした。弥山小屋から頂上への道には数基の鳥居が設けられており、鳥居は頂上の弥山神社まで続いている。

弥山山頂

弥山神社でお参りをし、頂上からの景色を堪能しながら体力と日没までの時間を考慮して八経ヶ岳をに向かうのを断念。弥山小屋に戻り行者還西口トンネル方面を向けて下山を開始する事にした。

下山-行者還トンネル西口

下山を開始するとすぐに小高く積み上げられたケルンが目に付き足を止める。ケルンには大きく二つの意味があるらしい。一つは道標としての目印、もう一つは遭難して亡くなった登山者の墓標だそうだ。ここからは行者還岳や大普賢岳方面の雄大な景色を拝むことができる。ここは大峰山のど真ん中。どの方角を見ても見えるのは山と空だけだ。

弥山小屋から行者還トンネル西口への下り出しはかなり急だ。この時間帯は西に傾きかけた太陽が山の影となるため日当たりは悪く、地面の凍結も激しい。アイゼンを装備して来なかったため一歩一歩慎重に下るがそれでも転倒は避けられなかった。聖宝ノ宿跡まで下るとそこから弁天の森までは平坦な道になる。

凍結した斜面の下りによる疲労は激しく、聖宝ノ宿跡を通過する頃には体力の余裕は無くなっていた。川合へ引き返し、日没後の登山道を歩くよりは安全だろうと考えて選んだ下山ルートだったが行者還トンネル西口から天川村役場まで歩いて戻る体力を残せるか危うい。休憩を取りながらふとiPhoneを見ると電波が入っている。駄目元で天川村にタクシーがあるかを調べてみると1社だけあることがわかり電話をしてみる。電話はすぐに繋がり行者還トンネル西口まで迎えに来てくれると言う。この時、時刻は15:45。電話口の方が言うにはここから登山口までは1時間かからないと言うので16:45に待ち合わせる事にした。電話を切り、下山を開始するが一向に下りが終わる気配がない。徐々に日が暮れはじめ辺りが薄暗くなってくる。ようやく行者還トンネル西口への標識のある奥駈道出合(おくがけみちであい)に着いた頃には約束の時間が迫っていた。

奥駈道出合から下る斜面は更に急になる。タクシーとの待ち合わせを30分程過ぎ、ようやく行者還トンネル西口の登山口が見えたのは日没直前だった。タクシーはもう待ってくれていないだろうと思い、天川村役場まで歩く覚悟はできていたが登山口を出ると目の前に一台のタクシーが停まった。待っていてくれたのだ。歩けば3時間以上かかったであろう天川村役場までの道のりをタクシーで約30分、疲労で朦朧とした意識の中運転手の話を聞きながらゆったりと戻る。

Conclusion

初めてのテント泊となった今回の山行。初日は天候に恵まれなかったものの2日目は雲一つない青空の下でこの上ない山日和となった。また自身の体力の再認識や装備の考え方など、今後計画を立てるにあたり有用な経験を得られた事はもとより、大峰山系の山深さと豊かさを知る良い山行になった。今回は登頂を見送った八経ヶ岳に再挑戦する際には行者還トンネル西口から登り、国見八方覗でテントを張ってみたいものだ。

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